概要
トピック: 愛知の老舗菓子「しるこサンド」が高級ブランド化を進め、シンガポールなど海外市場へ展開
主要な情報源(URL):
松永製菓株式会社・企業情報
https://www.aichi-brand.jp/corporate/auth-1903/
記事・発表の日付: 2025年〜2026年関連報道・企業展開情報
事案の概要:
愛知県の老舗菓子メーカー松永製菓は、1966年発売の「しるこサンド」を高級化した「生しるこサンド」や贈答ブランド「SHIRUKOTTE」を展開しています。
従来の“地元の駄菓子”という立ち位置から、“和洋折衷のプレミアムスイーツ”へ転換を進めています。
背景には、インバウンド需要やアジア富裕層市場の拡大があり、シンガポールなど海外市場で日本の地方菓子を高付加価値商品として売る動きが加速しています。
はじめに
愛知県民にはおなじみの「しるこサンド」が、いま海外市場へ本格的に踏み出しています。しかも単なる輸出ではありません。注目されているのは、“高級路線”への転換です。
松永製菓は、半世紀以上親しまれてきた素朴なビスケット菓子を、「生しるこサンド」や贈答ブランド「SHIRUKOTTE」として再設計し、シンガポールを含むアジア市場を視野に入れ始めています。一見すると地方銘菓の販路拡大に見えます。しかし本質はもっと大きい話です。
日本では長年、「地方のお菓子は安くて親しみやすいもの」という発想が主流でした。ところが現在は、その“ローカル感”そのものが海外では高級価値へ変わり始めています。しるこサンドの海外展開は、日本の地方ブランド戦略が根本的に変化している象徴とも言える動きです。
駄菓子だったしるこサンドが高級ブランドへ変貌
老舗菓子メーカーが進める価値転換の全体像
しるこサンドは、愛知県小牧市の松永製菓が1966年に発売したロングセラー商品です。北海道産小豆を使ったあんをビスケットで挟み、香ばしく焼き上げた独特のお菓子で、東海地方では「子どもの頃から家にあった定番おやつ」として知られています。価格帯も長年、庶民的でした。しかし近年、松永製菓は大きく方向転換しています。
象徴的なのが、2015年に発売した「生しるこサンド」です。従来の“硬めのビスケット”とは異なり、しっとり食感へ変更。パッケージも黒を基調にした高級仕様へ変え、贈答品市場へ踏み込みました。
さらに近年は、「SHIRUKOTTE」という新ブランドも展開しています。ここでは単なる菓子販売ではなく、カフェ、高級手土産、限定商品、デザイン缶など、“体験型ブランド”としてしるこサンドを再定義しています。つまり現在のしるこサンドは、単なるお菓子ではありません。「地方の懐かしい味」を、“日本文化を感じるプレミアム商品”へ変換する戦略へ進化しているのです。
そして、この方向性が海外市場と極めて相性が良いと考えられています。特にシンガポールでは、日本産スイーツへの信頼感が非常に強く、「地方限定」「老舗」「和洋折衷」という要素が高付加価値として機能しやすい環境があります。
世間では「懐かしい菓子が出世した」という見方が強い
ご当地ブランド成功例として注目される理由
一般的には、「しるこサンドが高級化して海外進出している」というニュースは、成功物語として受け止められています。特にSNSでは、「地元のお菓子が海外へ行くのが誇らしい」「昔のおやつが高級ブランドになって驚いた」という反応が目立ちます。
実際、日本の地方菓子は近年、大きな変化を迎えています。例えば、「白い恋人」「東京ばな奈」「ヨックモック」などは、すでに“日本旅行で買う高級土産”としてアジア圏で定着しています。そこへ、しるこサンドのような地方色の強いブランドも加わり始めています。
背景には、日本の菓子文化そのものへの評価上昇があります。海外では、日本の菓子は「甘すぎない」「繊細」「包装が美しい」「品質が安定している」と認識されることが多く、特に富裕層向け市場では強みになっています。また、シンガポールは高所得層が厚く、日本食文化への親和性も高い地域です。そのため、日本国内では“昔ながらの庶民派菓子”でも、海外では「日本の職人文化を感じる商品」として再評価されるケースが増えています。
一方で、「価格が高くなりすぎた」という声もあります。昔は気軽に食べるおやつだった商品が、ギフト市場向けへ変化することで、「地元の素朴さが失われる」という感覚を持つ人も少なくありません。つまり現在のしるこサンドは、「懐かしい駄菓子」と「高級ブランド」の間で、新しい立ち位置を模索している状態なのです。
本当に重要なのは“海外進出”ではなく「日本の地方性」が高級化している点
安さではなく“物語”を売る時代へ変わった
しかし、この話を単純な海外進出成功例として見ると、本質を見誤ります。重要なのは、日本企業が「性能」や「大量生産」ではなく、“地方性そのもの”を価値として売り始めている点です。これは、日本経済全体の変化とも関係しています。
かつて日本企業は、「高性能」「安定品質」「大量供給」を武器に世界で競争してきました。しかし現在、その領域では中国や韓国、東南アジア企業との価格競争が激化しています。その中で、日本企業が新たに強みにし始めたのが、「地域文化」「歴史」「限定性」です。しるこサンドもまさにその流れにあります。
愛知のローカル菓子であること。小豆文化があること。昭和から続く歴史があること。こうした“背景”そのものが商品価値へ変わっています。つまり今は、「何を作るか」だけでなく、「どんな物語を背負っているか」が価格を決める時代になりつつあるのです。
特にシンガポールのような成熟市場では、この傾向が顕著です。現地の富裕層は、単純な高級ブランドより、「日本の地方で長く愛されてきた」というストーリーに価値を感じやすい傾向があります。だからこそ、しるこサンドは“普通のお菓子”のままではなく、“愛知文化を持つブランド”として再設計されているのです。
これは地方企業にとって、大きな転換点です。以前は「全国区になること」が成功でした。しかし現在は、「地域性を消さないこと」が逆に強みになっています。
今後は“地方ブランド輸出”が日本企業の主戦場になる可能性
世界市場で求められるのは均一商品ではなく文化性
今後、日本の地方菓子や地方食品は、さらに海外展開を強める可能性があります。特にアジア富裕層市場では、「日本の地方限定ブランド」への需要が伸び続けています。しかも重要なのは、“全国展開していないこと”自体が価値になる点です。つまり今後は、「どこでも買える商品」より、「現地文化と結びついた商品」のほうが高価格帯で戦いやすくなる可能性があります。しるこサンドが高級化した背景には、単なる価格戦略だけではなく、「地方文化の再輸出」という流れがあります。
そしてこれは菓子業界だけの話ではありません。地方酒蔵、和菓子、陶器、伝統工芸、地方発ファッションなどでも同じ現象が起きています。日本国内では人口減少が進み、大量消費市場は縮小しています。そのため今後の地方企業は、「地元で安く大量販売する」モデルだけでは成長が難しくなります。代わりに、「地域文化を編集して海外富裕層へ届ける」という方向へシフトする企業が増えていく可能性があります。
しるこサンドのシンガポール展開は、小さなニュースに見えるかもしれません。しかし実際には、日本の地方企業が“価格競争”から離れ、“文化価値競争”へ移行していることを示す象徴的な出来事なのです。
参考文献・出典元
愛知ブランド・松永製菓株式会社

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