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カフェBGMで歌手にお金が?改正著作権法の本質と私たちの生活

法令情報
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概要

  • トピック: カフェ等の商業施設で流れるBGMの使用料を、歌手や演奏家、レコード会社にも分配する「レコード演奏・伝達権」を創設する改正著作権法が成立
  • 主要な情報源(URL): https://www.fnn.jp/articles/-/1061339
  • 記事・発表の日付: 2026年6月17日
  • 事案の概要:
    • 国内外のカフェやレストランなどの商業施設で流れるBGMの使用料について、これまで作詞家や作曲家のみに分配されていたものを、実際に歌う歌手や演奏家、音源を制作したレコード会社(著作隣接権者)も受け取れるようにする改正著作権法が参院本会議で可決・成立した。
    • 新たに「レコード演奏・伝達権」が創設され、公布から3年以内に施行される。
    • 小規模店舗などには負担軽減措置が検討される一方、本改正は日本のアーティストの海外進出や、海外で利用された際の対価を回収する「相互主義」に基づくグローバル基準への適合を目的としている。

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はじめに

街角のカフェやレストラン、アパレルショップに足を踏み入れると、心地よい音楽が流れています。私たちはそれを当たり前のように楽しんでいますが、実はこれまで、そのBGMが流れても「歌っている歌手」や「演奏しているミュージシャン」には一円も使用料が入っていなかったという事実をご存知でしょうか。

2026年6月17日、この長年の常識を覆す「改正著作権法」が成立しました。飲食店や商業施設で音楽を流す際、歌手やレコード会社にも正当な使用料を支払う仕組みが、公布から3年以内にスタートします。一見すると「アーティストにとって喜ばしいニュース」に見えますが、実はこれ、私たちの身近なお店から、国境を越えた巨大な音楽ビジネスまで、社会の仕組みを根本から変える可能性を秘めた重大な転換点なのです。なぜ今この法律が変わったのか、そして私たちの日常にどのような影響を与えるのかを紐解いていきましょう。


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店舗BGMのルール変更。これまでの不均衡と新設される権利の詳細

今回成立した改正著作権法の最大のポイントは、「レコード演奏・伝達権」という新しい権利が創設されたことです。これを理解するためには、まず音楽の権利が大きく二つに分かれていることを知る必要があります。

一つ目は「著作権」です。これはゼロから音楽を生み出した人、つまり作詞家や作曲家が持つ権利です。これまでも、カフェや美容室などの商業施設で市販のCDや音楽配信サービスの曲をBGMとして流す場合、店舗側は日本音楽著作権協会(JASRAC)などの管理団体を通じて使用料を支払ってきました。このお金は、作詞家や作曲家には分配されていました。

二つ目が「著作隣接権」です。これは、作られた楽曲を実際に歌ったり演奏したりする「実演家(歌手やミュージシャン)」、そしてその音源を録音・制作する「レコード製作者(レコード会社)」が持つ権利です。驚くべきことに、日本のこれまでの法律では、CDが売れたりテレビで曲が流れたりした場合には彼らにお金が入る仕組みがあったものの、カフェやスーパーなどの「公の場」でBGMとして流された場合に関しては、彼らに対価を請求する権利が認められていなかったのです。

この長年のアンバランスを解消するのが、今回の法改正です。施行後は、店舗側は作詞家・作曲家だけでなく、歌手やレコード会社に対しても使用料を支払う義務が生じます。

ただし、全国にある無数の飲食店や小売店からどうやって徴収するのかという実務的な課題は山積みです。法律は公布から3年以内に施行されるため、この準備期間中に、文化庁長官が指定する団体が中心となって、具体的な料金設定や徴収方法を決定することになります。参議院の委員会では、個人経営の小さな喫茶店や、非営利の文化・スポーツ団体への負担が重くなりすぎないよう、支払いの免除や減額といった配慮を求める決議も行われました。


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アーティストの正当な対価への歓喜と、店舗経営を圧迫するコスト増の懸念

このニュースに対する世間の反応は、立場によって大きく二極化しています。

まず、音楽ファンやエンターテインメント業界からは、圧倒的な歓迎の声が上がっています。今の時代、CDの売り上げは減少し、音楽の聴き方はストリーミング配信が主流になりました。1回再生されてもアーティストに入る収益はわずか数円未満という厳しい現状の中で、街中で自分たちの楽曲が使われているにもかかわらず、その対価が一切支払われないのはあまりにも不条理だという不満が長年くすぶっていました。

「素晴らしい歌声を届けてくれるボーカリストや、高度な技術を持つバンドメンバーの努力がようやく報われる」という意見は、SNSなどでも多くの共感を集めています。クリエイターだけでなく、プレイヤー(表現者)の権利も等しく保護されるべきだという現代の価値観に合致した法改正として、高く評価されているのです。

一方で、飲食店や小売店を営む事業者の間には、戸惑いと強い懸念が広がっています。

ただでさえ昨今は、原材料費や光熱費の高騰、さらには深刻な人手不足による人件費の上昇など、店舗経営を取り巻く環境は極めて過酷です。そこに新たな「BGM使用料の上乗せ」が加わることは、死活問題になりかねません。

「これ以上コストが増えるなら、お店で音楽を流すこと自体をやめるしかない」「大企業が運営するチェーン店ならいざ知らず、ギリギリでやり繰りしている個人店からは徴収しないでほしい」といった切実な声が、業界団体や経営者から噴出しています。

また、既存の著作権管理団体の徴収手法に対して、一部で「厳しすぎる」というイメージを抱いている層からは、「さらに複雑な仕組みで集金されるようになるのか」と警戒する意見も見受けられ、今後の透明性の高い制度設計が強く求められている状況です。


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真の狙いは「相互主義」。海外市場で稼ぐための国家的な音楽輸出戦略

一般的な報道では、「店舗の負担増」と「国内アーティストの救済」という国内の対立構造ばかりが注目されがちです。しかし、視点を世界へと広げると、全く別の本質が見えてきます。この法改正の最大の目的は、実は国内のカフェからお金を集めることではなく、「海外で流れる日本の音楽の対価を、海外から回収すること」なのです。

ここには国際的なルールである「相互主義」という壁が存在していました。

現在、世界140以上の国や地域(ヨーロッパ諸国など)では、すでに店舗BGMの使用料を歌手やレコード会社に分配する制度が導入されています。近年、アニメの世界的ヒットやストリーミングの普及により、日本のJ-POPアーティストの楽曲が、海外のカフェやレストランで頻繁に流れるようになりました。

本来であれば、海外の徴収団体が集めた使用料が日本の歌手の元に還元されるはずです。ところが、国際条約の「相互主義」の原則により、「自国で他国の権利を保護していない国には、相手国からも対価を支払わない」というルールが適用されてしまっていたのです。

つまり、日本が「自国のカフェで海外の曲を流しても、海外の歌手にお金を払わない」という法律のままだったため、逆に「海外のカフェで日本の曲がどれだけ流れても、日本の歌手は一円も受け取れない」という状態が続いていました。

これは、国境を越えてコンテンツを輸出していく日本のエンターテインメント産業にとって、巨額の「富の流出」を意味します。かつてのように国内市場だけで音楽ビジネスが完結していた時代ならまだしも、人口減少が進み、海外市場を開拓しなければ生き残れない現在の日本にとって、この制度の遅れは致命的な弱点でした。

今回の改正著作権法は、単なる国内の権利調整ではなく、諸外国と足並みをそろえることで、グローバル市場で日本の音楽産業が外貨を稼ぐための「インフラ整備」なのです。この文脈を理解することで、なぜ政府が長年の慎重な姿勢を転換し、店舗側の反発を覚悟してでもこの法案を通す必要があったのか、その切実な背景が浮かび上がってきます。


空間の価値の変化とグローバル化がもたらす音楽産業の進化

海外市場からの収益回収という国家的な狙いが現実のものとなれば、今後私たちの社会や生活にはどのような変化が起きるのでしょうか。

まず、日本の音楽産業は根本的なビジネスモデルの転換を迎えます。海外の商業施設で楽曲が使用されることによる莫大な二次使用料が還元されるようになれば、アーティストやレコード会社は、より積極的にグローバルに向けたプロモーションを展開するようになります。特定の国境を意識しない、多言語を取り入れた楽曲や、世界中の誰が聴いても心地よいサウンド作りが加速し、J-POPは真の意味で「世界の日常を彩る音楽」へと進化していくでしょう。才能ある若手ミュージシャンにとって、世界規模で収益を得るルートが確立されることは、大きな希望となります。

一方で、私たちの身近な生活空間である国内の店舗環境は、二極化していくと予測されます。

新たな使用料の負担を避けるため、多くの小規模店舗では、著作権の管理から外れた「ロイヤリティフリー(著作権フリー)のBGM」や、「AIがリアルタイムで自動生成する店舗専用の環境音」への移行が急激に進むでしょう。特定の誰かが歌っている流行のヒット曲ではなく、雨の音やカフェの喧騒に溶け込むような、主張を持たない機能的なサウンドが街に溢れるようになります。

その反面、「あえて使用料を払ってでも、こだわりの名曲や最新のヒットチャートを店内に流すこと」が、店舗の明確なブランド価値や差別化要因として再定義されます。「あのカフェに行けば、いつも最高の音楽体験ができる」というように、音楽が単なる「背景音」から「集客のためのプレミアムな空間演出」へと昇華されるのです。

今回の法改正は、単に「誰が誰にお金を払うか」というお金の動きを変えるだけのものではありません。音楽という目に見えない無形の価値に対して、世界基準で正当な評価を下すという意思表示です。施行までの数年間、私たちが普段何気なく立ち寄るお店のBGMに耳を傾けながら、その音楽が誰の才能によって生み出され、どのようにして私たちのもとへ届いているのか、その壮大なつながりに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

参考文献・出典

【2026年6月成立】改正著作権法「レコード演奏・伝達権」の創設とは?店舗BGMや配信音源の二次使用料が実演家・レコード製作者にも還元される新制度を解説 – プロスパイア法律事務所

【2026年6月成立】改正著作権法「レコード演奏・伝達権」の創設とは?店舗BGMや配信音源の二次使用料が実演家・レコード製作者にも還元される新制度を解説
2026年6月成立の改正著作権法で「レコード演奏・伝達権」が創設されます。店舗BGMや配信音源など商業用レコードの公の再生・伝達に対する二次使用料、指定団体制度、適用除外、付帯決議による小規模店舗等への配慮、事業者がとるべき対応まで解説しま…

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