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非上場株の相続税が激増?60年ぶりの「通達見直し」の衝撃

法令情報

連日ニュースで「非上場株式の相続税評価が抜本的に見直される」と報じられています。2026年4月には国税庁が有識者会議を立ち上げ、本格的な制度変更へのカウントダウンが始まりました。「税金の専門用語ばかりで難しそう」「うちは大企業じゃないから関係ない」と感じる方も多いかもしれません。しかし、このニュースは日本の企業全体の99%を占める中小企業の存続を左右し、そこで働く私たちの雇用や給与、さらには日本経済の根幹に直結する極めて重大な出来事です。

本記事では、このニュースの本当の深刻さと、私たちの生活や社会にどのような影響を与えるのかを、予備知識が一切ない方にも分かりやすく論理的に解説します。


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2026年4月始動!60年ぶりのルール変更で非上場株の相続税計算が根本から変わる

2026年4月20日、国税庁は「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」の第1回会合を開催しました。座長には租税法の権威である慶應義塾大学大学院の佐藤英明教授が就任し、年末に向けて議論を加速させています。このニュースを最も端的に表現するなら、「身内や経営陣だけで持っている会社の株(非上場株)を相続する際、税金の計算ルールがかつてないほど厳しくなる」という国税庁からの事実上の宣告です。

一般的な上場企業の株価は、株式市場で毎日取引されているため、いくらの価値があるか誰の目にも明らかです。しかし、世の中の大部分を占める非上場企業には、客観的な市場価格が存在しません。そのため、国税庁が定めた「財産評価基本通達」という詳細なマニュアルに従って、会社の保有資産や過去の利益をもとに計算上の株価を割り出しています。

現在社会的に大きな波紋を呼んでいるのは、1964年に制定されたこの通達ルールが、実に60年ぶりに根底から覆されようとしている点です。報道や有識者の見解を総合すると、国税庁は2026年内に議論の結論を出し、2027年度の税制改正大綱に反映させたうえで、早ければ2028年1月以降に発生する相続から新しいルールを適用する方向で調整を進めています。

イメージしやすいように例えると、これまで「100万円の価値がある」と計算されてきた親の会社を継ぐ際、新しい計算式が強制的に適用されることで「実は500万円の価値があるから、その分たくさん税金を払いなさい」と突然通告されるようになる状態です。会社の実際の業績が急上昇したわけでも、手元の現金が増えたわけでもないのに、国税庁の計算ルールが変わるというただそれだけの理由で、遺族や後継者が支払う相続税が何倍にも跳ね上がる恐れがあるのです。


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会計検査院も問題視した評価の歪みと国会審議を経ない「通達改正」という静かな増税

このニュースが経済界に大きな衝撃を与え、多くの経営者を震え上がらせている理由は、大きく分けて2つ存在します。

第一の理由は、「現行ルールの致命的な歪み」が国家機関によって公式に指摘され、もはや言い逃れができない状態になったことです。非上場株の評価には、主に以下の2つの方式が用いられています。

評価方式計算の仕組み特徴と指摘されている問題点
純資産価額方式会社が持つ全資産から負債を差し引いた「実質的な財産価値」で評価する会社の実際の解散価値に近く正確だが、評価額が高くなりやすく税負担が重い
類似業種比準方式事業内容が似ている上場企業の株価、配当、利益、純資産を基準にして評価する純資産価額方式に比べて評価額が極端に低く算出されやすく、節税効果が大きい

2024年11月に公表された会計検査院の報告書により、この2つの方式の間に驚くべき格差があることが発覚しました。比較方式(類似業種比準方式)で計算した株価の中央値が、財産方式(純資産価額方式)で計算した価値のわずか「27.2%」にしかならなかったのです。さらに、会社の規模が「大会社」に分類されるほど、この有利な比較方式を全面に使えるため、たくさん資産を持っている巨大な非上場企業ほど合法的に株価を安く見積もり、巨額の相続税を免れることができるという不公平が浮き彫りになりました。また、国税庁の独自調査でも、分析対象となった会社の約8割が評価直前の2年間で配当を出しておらず、「配当ゼロ」という要素が計算上の株価を不自然に引き下げる要因になっていることが問題視されています。

第二の理由は、今回の見直しが法律の改正ではなく「通達の改正」という形式で行われる点です。通常、税法そのものを変更して国民の負担を増やすには、国会で法案を提出し、与野党の厳しい審議を経て可決される必要があります。しかし、「通達」とはあくまで国税庁内部のルールや解釈の基準に過ぎません。極端に言えば、国会での承認プロセスを経ることなく、実務上の運用を変えるだけで事実上の大増税を実施できるのです。近年、タワーマンションを活用した過度な節税策が社会問題化した際にも、国税庁は通達改正によってその抜け道を塞ぎました。それと同じ「静かな増税」という強力な伝家の宝刀が、今度は日本中の非上場企業に対して振り下ろされようとしていることが、事態の深刻さを物語っています。


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中小企業の社長だけの問題じゃない!後継者不足や身売り増で従業員の雇用にも波及する

「社長や創業家一族が税金を多く払うだけなら、普通の会社員である自分には関係ない」と思うかもしれません。しかし、このルール変更は、私たちの生活や雇用、ひいては日本経済全体に極めて深刻な悪影響を及ぼすリスクを孕んでいます。

最も直接的な打撃を受けるのは、全国で事業を営む中小企業です。経済産業省が警鐘を鳴らしてきた「2025年の崖」という言葉の通り、現在日本の中小企業の経営者は高齢化がピークに達しており、数年以内に大々的な世代交代の時期を迎えます。そこに今回の新しい評価ルールが直撃すれば、これまでの株価が2倍、3倍に跳ね上がる企業が続出すると予測されています。

もし、高い技術力を持ち、毎年しっかりと黒字を出している優良な中小企業であっても、親から子へ会社を引き継ごうとした瞬間に、数千万円から数億円という莫大な相続税を請求される事態に陥ります。非上場株は上場株のように株式市場で簡単に売却できないため、現金に換えることができません。手元に払える現金がなければ、有能な後継者であっても会社を継ぐことを諦めざるを得なくなります。この結果、以下のような連鎖が社会全体で引き起こされることが想定されます。

一つ目は、黒字廃業の急増です。事業自体は儲かっているにもかかわらず、相続税が払えないという理由だけで会社を解散せざるを得ない事態が増加します。結果として、そこで働く従業員は理不尽に職を失い、長年培われた日本の高度なモノづくり技術や、地域社会を支える不可欠なサービスが永遠に失われることになります。

二つ目は、望まない企業の身売り(M&A)の加速です。親族への引き継ぎを断念した経営者が、会社を投資ファンドや競合の大企業に売却する動きが急増します。外部の資本が入ることで経営効率化の名の下に、従業員の給与カット、大規模なリストラ、不採算部門の切り捨てなどが頻発し、労働環境が悪化する恐れがあります。

三つ目は、企業による投資や賃上げへの強いブレーキです。経営者は将来発生する莫大な相続税の支払いに備えて、会社の利益を現金のまま内部留保として限界まで貯め込むようになります。その結果、本来であれば従業員の給料アップや、生産性を高めるための新しい設備投資に回るはずだった資金の流れが完全にストップし、日本経済全体の成長が大きく停滞する要因となります。


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2028年の新ルール適用に備え、現行制度下での事業承継や株価対策を急いで再検討せよ

この歴史的な通達改正の波に対し、経営者だけでなく、非上場企業で働くすべての人が当事者意識を持ち、取るべき具体的なアクションが存在します。

会社の経営層やその後継者候補は、現行ルールが適用されると見込まれる期間内(現時点の想定では2027年末まで)に、事業承継のスケジュールを大幅に前倒しすることを強く推奨します。まずは顧問税理士などの専門家とともに、現在の自社株の評価額を正確に算出してください。その上で、新ルールが導入された場合に税金がいくら跳ね上がるのかをシミュレーションし、制度が変わる前に生前贈与を実行したり、要件を満たして税金の支払いを猶予してもらう「事業承継税制」の適用を受けたりするなど、一刻も早い防衛策の構築が求められます。これまで通りののんびりとした承継計画では、会社を根底から揺るがす致命傷になりかねません。

また、非上場企業で働く一般の会社員も、決して人ごとではありません。自身が勤務する会社の「事業承継」が現在どのような状況にあるのか、強い関心を向けてください。もし社長が高齢であるにもかかわらず後継者が全く決まっていない場合、2028年以降の急激な税負担増に会社が耐えられず、ある日突然の身売りや廃業が発表されるリスクが飛躍的に高まります。経営陣が会社の将来に対してどのような承継ビジョンを描いているのかを確認し、状況によっては自分自身のキャリアプランを見つめ直し、転職や新たなスキルアップに向けた準備を始めるなど、先を見据えた危機管理を行うことが重要です。


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まとめ

2026年4月に本格的な議論が開始された非上場株の相続税評価ルールの見直しは、単なる税金の計算式のマイナーチェンジではありません。60年間続いてきた日本の事業承継の前提を根本から覆し、日本経済の土台を支える中小企業の存続メカニズムそのものを大きく揺るがす歴史的な転換点です。

税制の不公平を是正することは国家として不可欠な取り組みですが、その副作用として地域経済や雇用が破壊されては本末転倒です。私たち一人ひとりが、この国会審議を経ない「静かな増税」の行方を厳しく注視し、目前に迫る2028年の大きな荒波に向けて、会社と自分自身の生活を守るための入念な準備を今日から着実に進めていく必要があります。


【参考文献・出典元】

税理士法人 FPC・非上場株式の相続税評価ルールが見直しへ——2028年適用開始を予定

非上場株式の相続税評価ルールが見直しへ——2028年適用開始を予定 | 税理士法人FPC フロンティアパートナーグループ
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弁護士法人IGT法律事務所・非上場株式の相続税評価、60年ぶり見直しへ|国税庁有識者会議が2026年4月に初会合

非上場株式の相続税評価、60年ぶり見直しへ|国税庁有識者会議が2026年4月に初会合 | 弁護士法人IGT法律事務所
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