日々の仮想通貨市場において、「なぜイーサリアム(ETH)の価格パフォーマンスは、ソラナ(SOL)などの他のL1チェーンに比べて重いのか?」という不満の声が、コミュニティから頻繁に聞こえてきます。投資家の皆様も、イーサリアムの将来性に漠然とした違和感や不安を抱いているのではないでしょうか。
そんな中、2026年4月10日、イーサリアム財団のコア開発チームから現在の進捗を報告する「Checkpoint #9」が公開されました。ここで焦点となったのが、2026年に予定されている次期大型アップグレード「Glamsterdam(グラムステルダム)」の現状です。
本記事では、この公式発表の裏にある「投資家が抱く本質的な疑問」を紐解き、難解な「ePBS」や「ガス代再評価」といった技術的変更が、結果的にETHの価格やエコシステムにどのような影響を与えるのか、異常なまでの正確性と論理的推察に基づき徹底解説します。
4月10日発表「Checkpoint #9」で判明したアップグレードの現在地
今回の「Checkpoint #9」および関連するコア開発者会議(ACD)の発表によって、イーサリアムの次期ハードフォーク「Glamsterdam」に関する具体的な輪郭と、直面している課題が明らかになりました。まずは、確定した一次情報を整理しましょう。
イーサリアムは2025年に実施された「Pectra」および「Fusaka」アップグレードを経て、現在はパフォーマンスと持続可能性を最適化するフェーズに入っています。今回の「Glamsterdam」は、主に以下の2つのイーサリアム改善提案(EIP)を中核として構成されています。
- EIP-7732(ePBS:Enshrined Proposer-Builder Separation): コンセンサス層における、ブロック提案者と構築者のプロトコルレベルでの分離。
- EIP-7904(ガス代再評価:Gas Repricing): 実行層における、現代のハードウェアリソースに合わせたガス代(手数料)計算の根本的な見直し。
- EIP-7928(ブロックレベルのアクセスリスト): トランザクション処理の効率化に向けた仕様変更。
現在、開発環境である「Devnet-5」でのテストが進行中ですが、今回の発表で最も市場の関心を引いたのは、「ePBSの実装が予想以上に難航しており(trickier than anticipated)、進捗がゆっくりである」と公式に認められた点です。
また、当初Glamsterdamに組み込まれる予定だった「FOCIL(フォーク選択に基づく包含リスト)」という別の重要機能は、実装の複雑さからBase(L2)の開発チームなどが遅延リスクを警告した結果、さらにその次のアップグレードである「Hegotá(ヘゴタ)」へ見送られることが確定しました。開発陣が「スコープ(範囲)の規律」を保ち、致命的な遅延を回避しようとする姿勢が鮮明に表れています。
なぜ今「ePBS」と「ガス代再評価」の導入が絶対に必要なのか?
読者の皆様が最も疑問に思うのは、「なぜ今のタイミングで、こんな難解なアップデートをする必要があるのか?既存の仕組みと何が変わるのか?」という点でしょう。結論から言えば、これは「イーサリアムが資本とユーザーを取り戻すための、構造的なボトルネック解消」です。
1. ePBS(EIP-7732)による「中央集権リスク」の排除
現在、イーサリアムのバリデーター(承認者)の多くは、より高い収益(MEV:最大抽出可能価値)を得るために「MEV-Boost」という外部ソフトウェアを使用しています。しかし、この仕組みは数少ない「リレイヤー(中継者)」と呼ばれる第三者に依存しており、検閲リスクや中央集権化の懸念がつきまとっていました。
「ePBS(Enshrined Proposer-Builder Separation)」は、この外部に依存していた仕組みをイーサリアムのコアプロトコル(基盤)そのものに内蔵(Enshrine)するという画期的な技術です。これにより、トラストベースの中継者が不要になり、ブロック構築が分散化され、すべてのバリデーターが公平かつ安全に報酬を得られるようになります。これは、機関投資家が好む「ネットワークの堅牢性と中立性」を極限まで高めるために不可欠なピースなのです。
2. ガス代再評価(EIP-7904)による「処理能力の解放」
イーサリアムのトランザクション手数料(ガス代)を計算する現在の基準は、数年前に設定されたものです。しかし、コンピュータの処理能力(ハードウェア)は当時より格段に向上しています。「現在のガス代設定は、実際の計算コストを正確に反映していない」というのが開発者の見解です。
EIP-7904によるガス代の再評価が行われると、不当に高く設定されていた特定のリソースコストが引き下げられます。これにより、ネットワーク全体のデータベースを肥大化(ステート・ブルート)させることなく、1ブロックあたりのガスリミット(処理上限)を最大2億ガス程度まで安全に引き上げることが可能になるとアナリストは予測しています。つまり、L1の手数料が劇的に下がり、処理速度(スループット)が飛躍的に向上するのです。
ETH価格への影響:デフレ圧力の復活シナリオと遅延による失望売りリスク
では、結局のところこの発表を受けてETHの価格はどうなるのでしょうか?オンチェーンデータとファンダメンタルズに基づき、最良と最悪のシナリオを考察します。
【最良シナリオ】アップグレード成功による「EIP-1559バーン」の再燃
現在、ETHの価格が伸び悩んでいる最大の理由は、L2(レイヤー2)へのトランザクション移行が進みすぎた結果、L1(イーサリアム・メインネット)上での活動が減少し、手数料の焼却(バーン)メカニズムである「EIP-1559」が十分に機能していないためです。バーンが減れば、ETHはインフレ(供給過多)傾向になります。
しかし、Glamsterdamによってガス代の再評価が行われ、L1でのスワップ手数料が現在の3〜8ドルから劇的に低下すれば、DeFiユーザーや流動性が再びL1にも回帰する可能性が高まります。トランザクション総量が増加すれば、1回あたりの手数料が安くとも、結果としてネットワーク全体で焼却されるETHの総量が増加し、再び強力なデフレ資産へと回帰します。この「供給引き締め」こそが、ETH価格を強気相場(機関投資家の予測では2026年内に4,000〜8,000ドル水準)へと押し上げる最大の原動力となります。
【最悪シナリオ】ePBSの実装難航による「長期遅延」と資本逃避
一方で、今回の「Checkpoint #9」で露呈したリスクも無視できません。ePBSの実装難航により、目標とされている2026年6月のメインネット実装が、Q3(7〜9月)またはQ4(10〜12月)へとずれ込むリスクが現実味を帯びています。
仮想通貨市場は「時間」に対して非常に残酷です。アップグレードが半年以上遅延した場合、市場はイーサリアムの技術的停滞を嫌気し、ソラナなどの競合L1チェーンや、他の高利回りエコシステムへ一時的な「資本のローテーション(資金移動)」を加速させるでしょう。これがETHの価格を押し下げる最大のファンダメンタルズリスクです。
今後の投資戦略:ロードマップと市場価格を切り離し、オンチェーンデータを見る
ここまでGlamsterdamの技術と価格への影響を解説してきましたが、私たち投資家はどのように行動すべきでしょうか。
最も重要なアドバイスは、「アップグレードに対する期待(ロードマップ)だけで先回りしてETHを買い漁らないこと」です。過去の歴史が証明している通り、技術的なアップデートが完了したからといって、翌日に価格が急騰するわけではありません。
皆様が実践すべき具体的な投資戦略は以下の3点です。
- DevnetからTestnetへの移行を監視する: 現在の「Devnet-5」から、実際のテストネット環境へePBSが無事にデプロイされるタイミング(今後数ヶ月以内)が、開発遅延リスクの後退を意味する最初のシグナルとなります。
- L1のトランザクション数とバーン量を追跡する: Glamsterdam実装後、本当にL1の需要が復活したかを確認するためには、「Ultrasound Money」などのデータサイトでETHの供給量変化(インフレかデフレか)を日々チェックしてください。
- ETFの資金流入動向と併せて評価する: 技術的優位性だけでなく、マクロ経済の動向や現物ETFを通じた機関投資家の資金流入(4月上旬にも1.2億ドルの流入が確認されています)が合わさって初めて、大きなトレンドが形成されます。
イーサリアムはもはや実験的なプロジェクトではなく、グローバル金融の基盤となるための「最適化サイクル」に入っています。表面的な遅延ニュースに一喜一憂するのではなく、その裏で進む構造的な強靭化を冷静に評価することが求められます。
まとめ
今回の「Checkpoint #9」は、イーサリアムが抱える「中央集権的MEVリスク」と「スケーラビリティの限界」という2つの大きな壁に対し、開発陣が真正面から立ち向かっていることを示す重要な一次情報でした。
ePBSの実装難航による遅延リスクは確かに存在しますが、Glamsterdamがもたらす「L1の再活性化」と「強固な分散化」は、ETHが再びデフレ資産として圧倒的な価値を持つための必要不可欠な痛みと言えます。本質的な技術の進歩と、オンチェーンデータの変化を紐付けて市場を観察し続けることで、次なる大きな投資機会を掴むことができるはずです。
【参考文献・出典元】
- Ethereum Foundation Blog (2026年4月10日): Checkpoint #9
https://blog.ethereum.org/2026/04/10/checkpoint-9 - XBTFX: Ethereum Glamsterdam Upgrade
https://xbtfx.com/article/ethereum-glamsterdam-upgrade


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