企業型DC(企業型確定拠出年金)にロボアドを提供
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最近、こんなニュースを見ました。
金融ロボアドバイザーの開発・運営を行う株式会社フィンプラネット(本社:東京都渋谷区、代表取締役:長谷部直大、以下「フィンプラネット」)は、2021年1月より確定拠出年金制度における加入者の資産運用を支援する資産運用ロボアドバイザー『fintsDC』のサービス提供を開始いたしました。
2021.01.27
金融ロボアドバイザーの開発・運営を行う株式会社フィンプラネット(本社:東京都渋谷区、代表取締役:長谷部直大、以下「フィンプラネット」)は、 2021年1月より確定拠出年金制度における加入者の資産運用を支援する資産運用ロボアドバイザー『fintsDC』のサービス提供を開始いたしました。
確定拠出年金加入者は年々増加傾向にある一方で、多くの加入者は「どのように運用したらいいかわからない」「どのような運用商品へ投資したらいいのかわからない」 という悩みを抱えているため、よくわからずに元本確保型商品のみの運用となってしまっている場合が多く、適切な資産運用ができているとはいえない状況にあります。
他方、確定拠出年金導入企業においても、加入者に対する実効性のある投資教育が実施できず想定利回り以上の運用ができていない加入者が多いといった課題を抱えています。
企業の福利厚生として確定拠出年金向け資産運用ロボアドバイザー『fintsDC』を導入いただくことで、加入者は金融知識がなくても誰でもカンタンに最適な資産運用が行えるようになり、 加入者及び企業が抱えるこれらの課題を一挙に解決することができます。
また、企業型確定拠出年金及びiDeCoの運営管理機関へのホワイトラベル(OEM)の提供も行います。
運営管理機関へのサービス提供の場合、確定拠出年金に関する法令諸規則等に則り加入者に対するアドバイス内容は資産配分比率までにとどめ個別の運用商品の推奨や助言は行わない設計となっております。
私はこの記事を読んで、「なるほど。上手くニーズをとらえたなあ。」と思いました。
日本の企業型確定拠出年金の問題点
最近では、日本でも、従来通り会社で就業規則に従い勤続年数などを加味した定率の退職金を出すより、その資金を投資に回し運用した方が(長期間になればなるほど)利益が生まれ、会社にも従業員にもWinWinの結果をもたらす(ことが多い)という企業型確定拠出年金(日本版401K)が浸透しつつあります。
この確定拠出年金では、法律でその限度額は決まっていますが、毎月定額を積立て、その半分を会社が、その残りを従業員が拠出して将来の退職金を育てていきます。
私は、この確定拠出年金制度に賛成なのですが、日本のこの制度には問題も少なからずあります。
確定拠出年金制度の複雑さ
まず、拠出金額の計算(及びその制度)が複雑すぎるという点です。税の公平性から富裕層を優遇しないためというのは分かりますが、もう少しシンプルにできないものかといつも厚生労働省と財務省の発表を見ていて思います。これぞ「ザ・お役所仕事」といったものです。
退職金や年金というのはその人の人生にとって重要なことなのですから、もっと万人に関心を持ってもらえるようにすべきで、こんな入り口の地点から複雑にしすぎて、FPや意識の高い個人投資家しか分からないような制度設計にするのはいかがなものかと思うところであります。これではせっかくの確定拠出年金制度も多くの人が「面倒くさい。適当でいいや。」となってしまいます。
これは今回の趣旨ではないのでこの程度にしますが、また別の機会で書きたいと思っています。
個人では確定拠出年金制度を選べない
次に、確定拠出年金制度の選択権が会社側にあり従業員にない点です。こういうと、「いや、そもそも確定拠出年金制度は労働組合(労働者の代表)の同意で会社とともに制度設計を~」という反論がきそうではありますが、正直、労組に入って確定拠出年金制度を導入したり、変更したりするのは、一般の従業員にとってはハードルが高すぎですし、現実的には多くの場合は無理です。そもそも、確定拠出年金制度のことを知らない人の方が多いのかもしれません。
つまり、入社の時点で、確定拠出年金制度があるかないかは時の運ということです。しかも、現状、確定拠出年金制度は大手しか導入していないというのもどうかなと思います。これは労働者全般に関わる重要なことなのに。
これもいろいろと思うところはありますが、これもこのくらいにしておきます。
会社が確定拠出年金制度を運用することの難しさ
最後に、仮にその会社が確定拠出年金制度を導入していても、「好きな金融商品が選べないし」「説明も十分に受けられない」という点が問題であります。これが今回のテーマですね。
自分の好みに合った金融商品を選べない
例えば、会社が「○○社」の確定拠出年金制度に入っていると、そこの「○○社」の売っている金融商品からしか選べません。それが自分好みのラインナップをそろえてくれている会社ならいいのですけど、中にはひどいものもあって、「手数料たかっ。なんやねんこのぼったくり商品は」「ろくな商品がないな。よく分からないファンドマネージャーがやっているアクティブじゃなくて普通のインデックスでいいんですけど。」「中途半端なバランス型とかいらんねん。」「長期投資なのに謎の債券推し。なぜに。」「令和のこの時代にまだ毎月分配型とか売るんだ…」などなどいろいろなことを考えてしまいます。
この原因は分かっていて、昔ながらの証券会社の昔ながらの高額な手数料商売をしようとしているからですね。これが一つ目の問題点。主に既得権益とか政治的な問題です。
有名無実な投資教育
二つ目の問題点は、確定拠出年金制度の説明をする部署の知識不足です。入社したての従業員のほとんどは金融知識はないので、どの商品を選べばいいのか全く分からないのは致し方ないと思います。「自分のお金で、自分が運用するんだから、自分で勉強するのが当然。全ては自己責任。」というのは正論ですし、簡単ですが、誰しもができるというわけでもないのも事実です。
その不都合を補うのが担当部署の人の投資教育なのですが、その担当者もよく分かっていない人がほとんどなのですからどうしようもありません。
幸いにもその担当者が金融リテラシーが高い人だったとしても、それは属人的なものであって、その人が担当している間のみというのはいかがなものかという問題があります。また、仮にその人が分かっていても、本業は投資助言業じゃなく、総務とかなんですから、人に金融商品なんて勧められませんし、責任もとれません。だから、大方は「元本確保型」を勧めるんですよ。「元本確保型」なら絶対に損はしませんしね。それに、リバランスが発生するポートフォリオにした日には、導入時だけでなく、少なくとも毎年1回は再度教育をしなければならない。これは非常に負担が大きいわけです。
だから、元本確保型が52%(運営管理期間連絡協議会「確定拠出年金統計資料(2020年3月末))という異常なことになってしまうんですよ。
これではせっかく退職金を投資に回してその恩恵にあずかろうというのに、債券や貯金ばかりに投資していたら制度趣旨も何もありません。従来の退職金制度と何が変わっているのかという話です。
これらの問題を解決する一つの方法の提案
前置きが長くなりましたが、今回のニュースはこの問題を解決するというニーズに上手くマッチするということですね。先ほどのこの会社のHPを見てみると次のようなメリットがうたってあります。
企業様の『fintsDC』導入メリット
実効性のある投資教育の処方箋に
企業には加入者が適切な資産運用を行うことができるように投資教育をする努力義務があります。
『fintsDC』を加入者に利用していただくことで誰でもカンタンに資産運用を行うことができ想定利回り以上の運用が期待されます。従業員満足度・エンゲージメントの向上
福利厚生のグローバルトレンドとして、従業員の経済的なWell-being(*)向上を目的とした施策への注目度が高まっています。 fintsDCの活用により従業員の経済的なWell-beingを実現することで、従業員満足度や企業へのエンゲージメント向上が期待されます。 (*)Well-beingとは身体的、精神的、社会的に「良好な状態にあること」を意味します。従業員のお金の不安の解消による生産性向上
Well-beingの高い従業員は生産性が高いとの研究報告があります。 fintsDCの活用により従業員の経済的なWell-beingを実現することで生産性向上が期待されます社会保険料の一層の削減
『fintsDC』導入で誰でもカンタンに資産運用ができるため確定拠出年金利用のハードルが下がり、選択制の加入者増加や掛金の増額により社会保険料の削減が期待できるケースがあります。
要するに、これは商品を選ぶ必要はなくて、(具体的なものはちょっと分かりかねますが)WealthNaviみたいに、いくつかの質問に答えて、その人のリスク許容度に応じて投資先を決めるという感じではないかと思います。これなら、初心者でも「リスク許容度」という判断ができ、その判断に基づき自分の責任で投資をすることができるわけですから、上記の問題を解決でき、会社にとっても、従業員にとっても、(従来の方法より)WinWinの結果になるというわけですね。
リターンはいくら位を想定しているのかとか具体的なものは分かりませんけど、少なくとも元本確保型よりは資産は増えそうです。
この点を見て、私は「なるほど」と思ったわけです。
最後に
このように、中途半端な手数料の高い会社に確定拠出年金制度を任せるくらいなら、こっちの方がスマートだと思いますが懸念点もあります。
具体的な数字が出てませんけど、WealthNaviみたいに手数料が1%とかお高いんでしょう?
いろいろな人がいる会社の最大公約数の人に合わせるのなら、この方法が最も優れていると私も思います。私が会社の社長ならこの制度を取り入れます。いろいろな人間のいる中、一人一人投資教育をするより、リスク許容度に合わせて投資させた方が合理的です。結果も現状よりよい結果が導き出せそうです。
しかし、私が従業員ならこの制度は嫌ですね。普通に、手数料の安いSPY(IVV、VOO)に入れて放置しておきたいです。多分、こんな単純な方法でもトータルで誰もこれには勝てないでしょうね。
私が思うのは、去年は老後2000万円問題とかいろいろありましたけど、もっと国民みんなが老後もハッピーとなるような投資環境を整えてもらいたい、面倒くさがりには単純な方法を、勉強家には自由を与えるような制度設計にしてもらいたい、そんな風に考えております。
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