最初の投資商品として選ぶものとは
投資商品は数多くあり、本来ならば自分でいろいろ調べて投資を始めるのが本筋ですが、日本の場合、最初の投資商品は「投資信託」に事実上決められているといってもよいのではないかと思います。
どの投資商品にも共通していえることは、手元に残る利益というのは、得られた利益から証券会社・取引所の手数料と税金を差し引いたその残りです。投資をするのはその利益を最大化するためですから、投資商品を選ぶ際、①どのくらい利益が出るのか(商品の選択)と同じく、②手にした利益に対してどれくらい手元に残るのか(より手数料の安いもの、より税金の少ないもの)に気を回さなければなりません。
税金が安い金融商品
証券会社・取引所の手数料というのは、各社競争があり、その都度個々に比較していけばいいのですが、税金となると選択肢が非常に狭くなります。税金が安いものというのは、国が金融政策としてこういう方向に持って行きたいと考えたものだけであり、投資優遇策をとっているものだけです。
投資において税金の占める割合というのは非常に大きいので、優遇策のある商品とない商品とは利益の差が雲泥となってしまいます。運用実績とか運用成績とかすべてを飛ばしてしまうほどいわば最初から下駄を履かせるので、利益を最大化するためにはこれに乗るしかないのです。
「iDeco」と「NISA」
主な投資優遇策としては、財形年金貯蓄や財形住宅貯蓄、生命保険、贈与税非課税制度、教育資金の一括贈与非課税制度などなどいろいろありますが、自らの財産を殖やすという意味では、「iDeco」と「NISA」が視野に入ってきます。
iDeco(個人型確定拠出年金)
iDecoとは、私的年金制度の1つです。
年金には公的年金と私的年金とがあり、公的年金には、国民年金、厚生年金、共済年金、私的年金には、確定給付企業年金制度(DB)、確定拠出年金制度(DC)、厚生年金基金制度、国民年金基金制度などがあります。
iDecoは要するに、「年金制度崩壊が叫ばれて久しい昨今、公的年金だけでは老後は暮らしていけないから、私的年金で老後をカバーしてくださいね。でも、iDecoでは飽くまでも投資だから元本割れのリスクはあるので各自の責任においてやってくださいね。また、企業年金を別にもらえる人ともらえない人とが不公平にならないように、iDecoでは企業年金のあるなしで掛けられる金額に差をもうけますよ。」というものです。この私的年金を促していくために、税金面でかなりの優遇があります。
これはもちろん「任意」ですので、別に入らなくてもよいのですが、先ほどの理由から加入した方が合理的です。
ここで行うべきことは、最初に(金融庁が許可したいい意味でも悪い意味でも優等生のものの中から)金融商品を選び、あとはひたすら毎月お金が引き落とされて、老後になったらお金が戻ってくるというものです。
利回り5%を越える商品の組み合わせを狙いたいところですね。
なお、毎月かけられる掛け金は次の通りです。
加入資格 | 拠出限度額(月額) | |
自営業(第1号被保険者) | 月額 68,000円 | |
民間企業の会社員
(第2号被保険者) |
勤務先に企業年金のない会社員 | 月額 23,000円 |
企業型DCに加入している会社員 | 月額 20,000円 | |
他に企業年金等がある場合 | 月額 12,000円 | |
公務員(第2号被保険者) | 月額 12,000円 | |
専業主婦・主夫(第3号被保険者) | 月額 23,000円 |
主な税金面のメリットとしては、次の通りです。
- 掛け金の積立て時:積み立てているお金の全額が所得税から控除される
(課税所得額が少なくなり毎年の税金が安くなる) - 資産の運用時 :投資により得られた利息や売却益に税金がかからない
(本来利益の約20%(所得税15%+住民税5%)が税金だがこの部分が免除) - 受け取り時 :一度にまとめて受け取っても、毎年少しずつ受け取っても
どちらも税の優遇がある
NISA(少額投資非課税制度)
NISAとは少額投資非課税制度のことで、毎年一定金額の範囲内で購入したこれらの金融商品から得られる利益が非課税になる、つまり、税金がかからなくなる制度です。
NISAは要するに、「国民の資産のほとんどは貯金に回り、①日本企業の株式を購入してくれないから経済は上向かないし、②貯金はほとんど増えないから国民の老後の資金も足りなくなる。だから、貯金をやめて投資をしてほしい。そのために投資がしやすいように税金を安くするよ。ただ、あまりやると投資ができるお金持ち優遇といわれるから一定の限度をもうけるよ。」というものです。
これももちろん「任意」ですので、別に行わなくてもよいのですが、先ほどの理由から行った方が合理的です。本来、利益から約20%もの税金を持って行かれるところそれが0になるのですから。
NISAには、2種類あり、株や投資信託の値上がり益や配当金(分配金)が非課税となる「(普通の)NISA」と、対象商品の投資信託をiDecoのようにひたすら積み立てる「積立てNISA」とがあります。
NISAはどちらか一方しかできず、どちらを選ぶかは悩ましいところですが、一般的には、現物取引を行いたい中・上級者は「(普通の)NISA」、最初の投資商品を選んだあとは特に何も考えなくてひたすら積み立てればいい「積立てNISA」を行うことが多いように思われます。
NISAは、年間非課税額 ¥1,200,000(5年間のみ)ですので、無理やり月額に直すと10万円
積立てNISAは、年間非課税額 ¥400,000(20年間)ですので、月額3万3,333円となります。
ちなみに、私は、個人的には、iDecoもNISAも老後のための資金であり、非常にディフェンシブ(守備的)に扱うべきであり、最後の砦となるものだと位置づけていますから、積立てNISAを選択しています。ここがあるから他の投資は積極的にリスクをとっていけると考えています。
本当の投資金とは
以上のように、さらっとiDecoとNISAを見てきましたが、ここでいいたかったことは次のことです。
前の記事でも述べたとおり、毎月の収入から生活資金を除いた余剰資金が投資資金です。
私は、その余剰資金からさらに上記のiDeco、NISAの金額を引いたものが純粋に自分で選んで投資する投資資金分だと考えています。
資産の種類 | ||
①生活資産 | 生活資金(生活するためのお金) | 貯金(いつでも使えるお金) |
②投資資産 | iDeco、NISAを含めたセイフティーネットの役割を果たす個人的な年金 | 投資資金 |
このようにiDeco、NISAをディフェンシブに扱わず、積極的運用するのだという考え方も一理ありますが、その際にも、すべてを積極運用せず、他の一部をディフェンシブに扱うべきであると考えています。
それはともかく、このように税優遇策があるのですから、「まずはこの枠を使い切る」ことを投資の初めに持ってくることはそれほど間違っていないと考えています。
この点は、どのようなスタイルの投資家であっても万人に対していえるのではないかなと思います。
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